⑦-5.顧客獲得セールストークの反響率の公開と検証

市場・経営

さて、この記事の反響率はどうだったか。

当時は、グーグルアナリティクスなどのアクセス解析が今ほど一般的ではありませんでしたし、ジオシティーズにも無料のアクセス解析はありませんでした。

だから、実際にこの記事を読んだ人が何人いて、そのうち何人が興味を持ったのか、反響率を示すデータはありません。

ただ、興味深いことがあります。

この記事を発表する前に、この記事に魅力を感じるかどうかの評価をいただきたく、知り合いの社長2人に見てもらったのです。

結果は、誰もセミナー参加を選ばず、2人とも150万円で即決現金で購入したいというお申し出。

評価をお願いした2人が、2人とも購入を希望したわけですから、事前評価での反応率は100%です。

そりゃ、そうだろうなあと思います。

商圏が絶対にかぶらない遠方で、2~3店舗の施術院を経営しているオーナー現役院長さんたちですから、即効で欲しい!となるのも不思議ではありません。

だって、そのような結果になるように書いたのですから、そう反応するのは当たり前なんです。

もちろん、これは評価をお願いした2人の結果であって、ホームページ全体の反響率が100%だったという意味ではありません。

しかし、私が想定していた反応が、実際に目の前で起こったわけです。

まあ、当然の結果なんですよね。

では、どうして150万円でも安いと感じてもらえたのか?

それは、どうして施術院の社長になりたいのか、自分の胸に手をあててみればわかることです。

私、経営セミナーには一度も行ったことがありませんが、技術セミナーには、すごくたくさん参加しています。

開業してまだ全然収益がないころから、大阪までセミナーを受けに行っていましたし、施術に役立つ技術講習を探しては、毎月どれだけ参加していたことか。とにかく、私にとっての目標は、ひたすら施術で使える技術と症例検証に役立つ知識を勉強することだったのです。

ところが、セミナーに参加しているのは、スタッフよりも事業主の方が多いんですよ。

彼らの最大のお悩みは、スタッフに対する教育です。何とか顧客を獲得できるスタッフになって欲しいわけですから、自分自身が技術を教えられる存在になるために、技術講習へ参加しているわけですよ。

本当は、そんなんだったら、経営セミナーに行けばいいじゃんって思うでしょ?

ところが、いい技を教え込めば、顧客獲得率が絶対に上がると考えている。まるで新興宗教の信者のごとく、技術さえ身につければ繁盛できると信じ込んでいるわけですよ。

では、なぜ、そこまでスタッフ教育に熱心なのか?

これは、私が知り合った経営者さんたちに共通して見られた考え方なのですが、1年でも繁盛してくれればいい、その実績を引っ提げて、今度は千客万来の繁盛コンサルタントとして、経営に行き詰まっている施術者を相手に経営スクールをやっていきたいというわけです。

当時、整体業界では施術料金の値下げ競争が激しく、施術の腕があっても、経営的に十分な収益を確保するのは簡単ではありませんでした。

一人で経営する施術院には売上の限界があり、複数のスタッフを雇って店舗を拡大しようにも、施術単価が低ければ、人件費などの経費を差し引いた利益を確保するのも難しい。

そんな厳しい環境だからこそ、施術そのもので勝負する道を選んだ私にとって、業界の現実は決して甘いものではありませんでした。

要は、自費施術の世界は、もう腕がいいか悪いかだけの研ぎ澄まされた究極の世界だと実感します。

緊張感ハンパないが、施術が成功した時の唯一感もハンパない、素敵な世界です。

誰も追従できない唯一感がすごく好きな性分も合わさって、健康に特化した施術で勝負しよう!そう決意して昭島で開業したのです。

引用:④開業前の大失敗で学んだ重大な気づき

開業時の昭島市の施術料金の相場も、ホントにひどかった。

昭島の場合、そもそも自費施術そのもののブランド力が弱く、供給過多による価格競争に巻き込まれやすい環境でした。

全身整体60分3,000円程度が当たり前という価格帯だったのです。

そんな環境の中で、私は半身だけを整体するコースを7,000円に設定してしまった。

これでは、いくら施術の価値を伝えようとしても、価格面でまともに勝負するのは簡単ではありません。

そこで渋々、美容整体の開拓に励むことになったくらいです。

お試しフリーク化したようなお客様でも20回以上通いたくなってしまうセールストークをチラシに書くことで、集客には確かに効果がありました。

しかし、肝心の西部多摩地域での美容整体市場そのものが小さく、集客に成功しても、得られる収入は月平均であれば30〜33万円、最高に良くて月収40万円程度でした。

ボーナスありの正社員で、月の手取りがそれくらいであれば、まずまずっていうところでしょうが、個人事業で美容整体だけで得られる月収としては、副業レベルと言わざるを得ません。

本業として十分な収益を確保できるようになるまでには、経営面で苦戦を強いられたのです。

今でこそ、治療院経営に関するマーケティングは確立されていて、専門コンサルタントの支援をうければ繁盛はたやすいと思われますが、当時は、まだまだメソッドの確立はありませんでしたから、施術院を繁盛させること自体、決して簡単ではないという実感が経営者にはあったはずです。

だからこそ、施術院を繁盛させることに苦労するよりも、繁盛したいと願う施術師たちを相手に商売をするという選択肢は、オーナー院長さんにとって十分に魅力的だったのです。

現実、2004年あたりの施術者数よりも2009年の方が圧倒的に多くなっていましたから、施術で稼ぐよりも、その人たちを相手に商売をした方が圧倒的に儲かるのは目に見えていたはずです。

しかも、2009年の時点では、業界内で誰もが知るような専門コンサルタントは、まだ出現していない。

今の状況であれば、ノウハウさえ確立してしまえば、一気にコンサルタント事業に発展させていける。

ただし、そのためには、自店舗の大繁盛という実績が絶対に必要なのですよ。

大繁盛は、あくまでも実績づくりのつもりかもしれませんが、社長さんだって、永続的にコンサルタントとして商売を盛り上げていくにあたって、繁盛が一時的なもので終わってはいけないことくらいわかっているはずです。

経営を軌道に乗せたい同業者は、オーナー先生の、いつまでも続く繁盛ぶりにあこがれを持つわけですから、オーナー先生は常に自身の施術院と、広げた複数店舗の1店1店全て大繁盛させておかなければならない使命感でいっぱいなのです。

そこに、この記事がドーンと。

そうすると、社長さんは、こう考える。(私がイメージさせる像として)

これで従業員全員が売れる施術者に育つ。しかも覚えさせるだけで済む、お客様と対面交渉しなくてトークを聞かせるだけでもいいなら、確かに従業員にコミュ力がなくても問題ない。

そして、全員がしっかりセールストークさえできれば、本店はず~っと大繁盛のままだ。

これで本格的にスタッフを技術者に育てれば、直営店の店長として働かせることができ、(繁盛を経験させた後、独立を促すことに成功すれば)後々のFC事業展開も夢でなくなる。

そして、規模が拡大し資金が潤沢になれば、大々的に技術スクールを開いて、FC店に対して定期研修を強制、その教育費を利益の上乗せにする傍ら、経営に行き詰まっている同業者を多数集客し、新たなFC店展開の候補づくりを促していける。

つまり、治療院経営スクールを継続させることと、その後の大きな事業拡張のための原資となる顧客づくりができる!という野心がムラムラッと湧いてくる。

さらに言えば、その技術スクールの講師まで、無料で確保できるわけですよ。

自分のお店のスタッフに、「スクールで講師を務めれば、独立した時にハクがつくよ」と耳元で囁けば、自ら講師に名乗り出てくるかもしれない。

では、その従業員は、どこから集めてくるのか。

開業希望者を対象に、「うちで繁盛の秘訣を教えます」と募集するわけです。採用したら、使える技術を懇切丁寧に教え、マメに研修を行いながら、長めの期間をかけて育てていく。

手厚く面倒をみることで、従業員として働く心地よさを体験させる一方、実際に独立したらどれほど集客が大変なのかも見せていくんです。

そうすると、独立を目指して入社した人の中には、いざ自分で開業することが怖くなって、独立よりも今いるお店で出世して給与を上げていくことを選ぶ人も出てくる。そうやって、いつしか独立の意欲も無くして社畜化していくわけですよ。

経営者にとって、これほど都合のいいことはありません。

採用した従業員は真面目に働き、自分のお金で技術習得に励んで腕を上げ、常連客をつくっていく。

おまけに、技術スクールなどの他事業にも熱心に協力してくれる。それでいて、独立への野心を残している従業員はFCのオーナーへ、忠義の厚い従業員はなかなか独立に踏み切らず、店長や経営陣へと出世して、長く自分の元で働き続けてくれる。

ここまでくれば、社長が現場にいなくても、店舗も技術スクールも、社内の人材によって回せるようになるかもしれない。

そうなれば、社長は会社の事業をさらに広げるために人と会い、会食やゴルフを通してコラボレーションの話を進めたり、講演をして回ったりする。

現場の仕事から離れ、事業全体を動かしていく。経営者が思い描く、左うちわの生活です。そして、経営者がイメージするお店で働く従業員の最高の理想像なのではないでしょうか。

現場から離れても事業がすべてうまく回る。その仕組みを実現するためには、何よりも、原資となる従業員教育が要になるわけですよ。

この記事の目的は、その野心をムクムクッと出させることでしたから、私の狙いどおりの反応が得られたわけです。

この記事を2人に送りつけたのは、8月16日のお盆の昼でした。そして、2人とも夕方までには、150万円で即決購入したいと申し出てきたのです。

ところで、私は事業を拡大したい人間ではありません。

私は事業主ですが、基本、心はサラリーマンです。

サラリーマンらしく、生活していくのに困らない月収程度で、60歳の定年退職まで事業が持ってくれればいいかなって。

だって、事業拡大って、どんなに簡単にやろうとしても、軌道に乗るまでは費やす人生時間が膨大なはずです。

それ、すごくイヤなんですよ。仕事は現場主義ですが、基本はプライベート重視派の人間ですから、一日たりとも忙しく過ごしたくないのです。

それに、やりたくて社長になったんではなくて、やらざるを得ないから渋々社長をやっているというカンジなんです、私。

しかし、経営者さんってのは、一般的には私の真逆だと思います。

団塊世代ほどではないにしても、私たちの世代にも、「将来の夢は社長になることです」という人が、まだまだ存在した時代です。

おまけに、「24時間働けますか」というリゲインのテーマ曲が流行した時代の空気を知り、就職氷河期を経験し、サービス残業に明け暮れた人も少なくない世代です。

つまり、サラリーマンという働き方に辟易している人も、大勢いたのです。

いつまでも現場にいたくない思いが強いのです。だから社長になる。いや、社長になりたいから社長業をやるの。

そういう人を対象に、この記事を書いたのです。

しかも、私が誰なのかも知らせていなかった。

何よりも、ジオシティーズの個人HP自体、そもそも完全ペンネーム(punpunseitaiというペンネーム)で運営していました。

妻に内緒での個人HPの運営でしたから、私が誰であるか、どこでお店をやっているかも、全く知らせていない状態でやっていたのです。

私、セミナーに参加して誰かと知り合っても、名刺は渡さないように心がけていますから、基本は自分がどんなお店をやっているか、いや、そもそも経営者かスタッフかも明かさない状態で参加していることがほとんどです。

だから当然、2人は私の顔と、私が事業者であることは知っていましたが、それ以外のことは知りません。

2人はセミナーの主催者ですから、私が知っていたのは主催者のメールアドレスだけ。そのアドレスに記事のURLを送ったところから始まったのです。

そして、アクセスした先は、ペンネームで運営している個人HPでしょ?

つまり、私の店舗の所在地や知名度、経営実績を前面に出して売り込んだわけではありません。少なくとも、そうした情報を材料にした販売ではなかったのです。

だからね、私の素性や店舗の実績とは切り離して、文章が提示した商品と将来像に強い関心を持ってもらえた、と考えてよいのではないでしょうか。

それが、私が当時の2人の反応から得た手応えでした。

さて、本当にその2人にセールストーク3点セットを売ったか?

売ってませんよ。

もし、2人が買いたい!となって、本当に売ってしまったら、私の年間の売上が1,000万円を超えてしまい、消費税の免税事業者でいられなくなる可能性が出てきます。

そうなれば、毎年、消費税の納税についても考えなければならない。

それ、イヤなんですよ。

だって、施術業って、仕入れがないことが基本の商売形態でしょ?

もちろん、家賃や光熱費、消耗品などの経費はかかります。しかし、物を仕入れて販売する商売と違って、売上の大部分を占めるのは、自分の技術と労働によって生み出したサービスの対価です。

だから、消費税の負担を考えると、仕入れのある業者と比較して、納税額が重くなりやすいわけですよ。

例えば、売上が増えたことで消費税の課税事業者になった場合、実際にいくら納税することになるのか。売上に係る消費税額から、仕入れや経費に含まれる控除可能な消費税額などを差し引いて計算するわけですが、施術業は仕入れにかかる消費税が少ない。

そうすると、売上が増えたからといって、手元に残るお金が売上の増加分と同じ割合で増えるわけではないのです。

これ、経営者なら実際に電卓をたたいて考えてみてくださいよ。

施術を何人こなして、どれだけ売上を増やせば、ようやく手元に残るお金が増えるのか。それなのに、せっかく稼いだお金の一部が消費税の納税に回るとなれば、私は何のために働いているんだという話になるわけです。

もちろん、消費税の納税額は売上高だけで決まるわけではありませんし、課税事業者になる時期や計算方法によっても違います。しかし、当時の私にとっては、そこまでして売上を増やす必要があるのか、という問題だったのです。

個人事業者なんだから、免税事業者でいられる条件を満たしているのであれば、その立場を手放してまで売上を増やす必要はない。少なくとも、私の事業方針ではそう考えていました。

それに、さっきも言ったように、私は基本はサラリーマンなので、生活していくのに困らない月収程度で、60歳の定年退職まで事業が持ってくれればいいかなって。

老後は年金生活者になりたいから、老後のための積み立ては大事です。

さいわい、個人事業主でも、将来の年金を上乗せする制度や退職金を積み立てる制度が、国によってしっかり用意されています。

例えば、妻にも共同経営者として事業に参画してもらい、それぞれの加入資格や制度の条件を確認したうえで、国民年金基金や小規模企業共済などを活用していく。そうやって夫婦2人で将来に備えれば、65歳からの生活設計だって、かなり具体的に考えられるわけですよ。

もちろん、実際に受け取れる年金額や積立金は、加入期間や掛金などによって変わります。しかし、老後の生活費を現役時代に準備しておけば、定年後も無理に稼ぎ続けなければならない状況を避けられる可能性が高まります。

その後、少しばかり稼いでおけば、今のような物価の時代でも、おそらく年3回くらいは夫婦2人JALのプレエコでヨーロッパへ旅行に行けるんじゃないですかね。私は海外旅行は嫌いですが……。

私は、そういう未来設計なんです。

事業を大きくして、従業員を増やして、売上をどんどん伸ばしていく。そういう人生を望んでいる人もいるでしょうが、私は違います。

自分の生活に必要な収入を確保して、老後の準備を整えたら、あとは自分の時間を大切にして暮らしていきたい。それが、私にとっての事業を続ける目的だったのです。

では、なぜ150万円の販売を中止したのか?

2009年当時、私は肩こり・腰痛・脚の不調に対応した自費施術業という商売は、いずれ自然に終息していくのではないかと予想していました。

実際、施術料金の過当競争が続き、これから先も今までと同じやり方で仕事を続けていけるのか、という不安がありました。

だからこそ、本気でコンサルタントへの転向を考えていたのです。

ただし、コンサルタント事業を始めれば、当然ながら新しい仕事を軌道に乗せるための時間も労力も必要になります。私が望んでいる生活とは違う方向に進むことになるわけですから、できれば、そんなことはしたくなかった。

ところが、美容系の新しい超需要の存在に気づき、そこに未来への希望が持てるようになりました。

これなら、無理にコンサルタントへ転向しなくても、施術業を続けていける目途が立つのではないか。

そう考えられるようになったことで、セールストーク3点セットを販売する必要もなくなったのです。

ですから、販売は即座に中止し、記事も撤去できました。

もともと、お二人には「反応がよければ販売する予定ですが、反応が悪ければ販売しません」とも伝えていましたから、販売しないことになったというより、私自身の将来設計が変わったことで、販売する理由がなくなったという方が正確かもしれません。

せっかく150万円で買いたいという人が現れたのに、なぜ売らなかったのか。

それは、売る能力がなかったからでも、買い手が見つからなかったからでもありません。私には私の人生設計があり、その設計に照らし合わせたとき、販売を続ける必要がなくなったからです。

商売で稼げることと、その商売をする必要があることは、私にとって別の話なんですよ。

では、2009年当時、本当に必要だった解決方法とは何だったのか?

実は、従業員にセールストークを仕込むことではなく、新店舗を開く時は、店長からスタッフまで全員女性にすることが、当時の最も有力な解決方法だったんですよね。

これは、もう2004年くらいから感じていた傾向でした。

私、そのことを、システム障害で現在掲載停止になっている旧ブログに、「静かな価値基準の変化」という題目で今年の元旦に書いています。ブログの復旧の目途が全く立たなく記事を読むことができないため、エッセイとしてお店のHPに掲載し直す予定です。

では、なぜ、女性スタッフを中心にしたお店であれば、セールストークに頼らなくても企業化できると考えたのか?

まず、2005年頃から、私の施術を受けに来るお客様の中心が女性へと移っていたことがあります。そして、これからは女性客が、女性施術者に施術してもらいたいという要望を強めていくのではないか、と予測していたのです。

2004年頃のことを思い出してください。

産婦人科はどうなったか、内科はどうなったか、皮膚科や歯科はどうだったでしょうか?

もちろん、診療科によって事情は異なりますが、身体のデリケートな部分を診てもらう際などに、同性の医師を希望する人がいる。そうしたニーズに応える形で、女性医師が診療する医療機関も選択肢になっていたわけですよね。

うちの業界だって、顔などは直接触れる箇所ですし、何よりも、見本とする人に施術してもらいたい、という傾向が出てきていたんですよ。少なくとも、私は2004年くらいの段階で、そう感じていました。

ところが、その後の5年間を振り返ってみても、私の目には、女性施術者が目立って増えていったのはリラクゼーション業界とヨガ業界くらいに映っていたのです。

ここが、私には不思議で仕方がなかった。

女性のお客様が増えているのであれば、女性のお客様の気持ちを理解しやすい女性施術者を中心にしたお店をつくる。そうすれば、施術を受ける側も自分の悩みを話しやすくなり、身体の悩みや美容について共感してもらえる機会も増えるのではないか。

私は、そこに大きな可能性を感じていたのです。

女性は第一に共感を求める、と私は考えています。自分の悩みや希望を理解してくれる相手に心を開き、その人の提案だからこそ受け入れてみようと思うことがある。

だとすれば、施術の価値を言葉巧みに説明して納得してもらうことだけが、顧客を獲得する方法ではないわけですよ。

もちろん、女性施術者であれば誰でもお客様の心をつかめるという話ではありませんし、セールストークが一切不要になると断言するつもりもありません。

実際、指名No.1の女性施術者の施術を受けてみると、会話の中に、ほんのりと、しかもさりげなく、洗練されたセールストークが織り込まれていると感じます。

普通に聞いているだけなら、気遣いや世間話の延長にしか聞こえないかもしれません。しかし、経営やセールストークの視点から聞くと、何気ない対話の中に、お客様の気持ちをつかみ、自然に信頼関係を深めていくための工夫が見えてくるのです。

本人が意識して組み立てているのか、それとも経験の中で身についたものなのか、そこまではわかりません。ただ、少なくとも私には、そうした会話が単なる雑談で終わらず、お客様が何度も通いたくなる関係をつくるうえで、重要な役割を果たしているように感じられます。

ですから、女性施術者にセールストークの需要がないというわけではないと思います。

ただ、当時の私には、女性客の増加に合わせて女性施術者を中心にした店舗づくりを進める方が、セールストークを磨くこと以上に大きな可能性を秘めているように思えたのです。

女性で肩こりや腰痛を何とかしたい!という人たちの中には、他人に身体のケアを任せたい人もいれば、自分で身体を動かして改善を目指したい人もいる。

2009年時点では、前者はリラクゼーションへ、後者はヨガへと向かう。私には、そうした需要の分かれ方が見えていました。

それなのに、自費施術業界では、女性のお客様が求めているものを考えるよりも、従来の男性中心の施術者像にこだわり続けたわけです。

そこに、私のセールストーク販売が入り込む余地はある。

女性施術者を中心にした店舗づくりこそが当時の有力な選択肢だったにもかかわらず、その可能性に気づかず、従来のやり方に固執する施術業界には、セールストークという商品が売れるだけの膨大なポテンシャルが眠っていたのです。

それで、セールストークの販売でこれからは食べていこうと、2009年9月7日にこの記事の掲載を始めたんですよ。

しかし、一週間もたたないうちに撤去しましたが……。

そして、セールストーク3点セットは消滅した。

その後、私は二度と兼業への誘惑に負けないようにするために、セールストーク3点セットもセミナーのテキストも、全部捨てちゃったんですよ。

ですから、今、販売できる商品は全く存在していませんのよ。

いや、正確に言えば、一番古い、1997年に買ったノートPCにデータを保存したままになっているのですが、この間、スイッチを入れてみたら全く起動しなかったので、事実上は商品がないってことで……。

150万円で買いたいという人が現れた商品なのに、売らずに販売を中止し、その後は二度と販売しないようにと関連資料まで捨ててしまった。

今から考えると、ずいぶん極端なことをしたものですよね。

でも、当時の私にとっては、それだけのことをしてでも、施術業を続ける方向に人生を戻したかったのでしょう。

セールストークを売る道もあった。コンサルタントに転向する道もあった。しかし、私が選んだのは、事業を拡大することでも、販売ノウハウを売ることでもなく、自分の施術院を続けていくことだったのです。

150万円で売れる商品をつくることはできた。でも、それを売って生きていくことが、私の望む人生とは限らなかった。

そして、その商品は、今となっては古いノートPCの中で眠ったまま。

もし、あのパソコンが再び起動したら、何が出てくるのでしょうね。