それは、セールストークをどうしようか?という問題でした。
私には、最初の1回の施術が終わるまでに、お客様のお悩みが叶うまで何回の施術が必要か、おおよそわかってしまうという感覚がありました。
だからこそ、その回数を最初に伝え、納得してもらった上でお客様になってもらいたかったのです。
しかし、現場では、納得までの道筋が、理想ととてもかけ離れていました。
どんなに1回目の施術で劇的な変化を体験してもらっても、必要な施術回数をそのまま伝えると、継続してもらえない。
一方で、最初は少ない回数で願いが叶うと伝え、後から必要な回数を増やしていく方法なら、お客様は継続してくれる。
つまり、正直に伝えたいことを最初に伝えるとお客様になってもらえず、回数券を売ることを優先すれば、自分が納得できないやり方になってしまうわけです。
世の中、きれいごとだけでは生きていけません。清濁併せ持つことが、どうしても必要ですね。
それはわかってますよ。
重々わかっている。でもね、やっぱりきれいごとを通してみたかったんです。
だって、最初は店の看板を背負っているので、最低でもお店に迷惑はかけられないのです。トラブルが起きないルートは、お客様に納得していただいた上でサービスを購入していただく、ごくごく当たり前のことを実行していくことです。
ところが、現実はやはり違うのです。
例えば、当時のひどいケースを挙げれば、20代前半で老け顔に悩むお客様に対して、目鼻立ちのくっきりした若々しいフェイスラインだった時代に戻るまで、27回~30回くらいはかかるなあって。このお客様の目をぱっちりさせるには15回くらいかな、とか。
ところが、それをそのまま施術後の結果として伝えると、どんなに1回目に劇的な変化を体験されたお客様でも、継続はありません。
だから、私以外のスタッフは社の方針どおり、5分程度サラッとカウンセリングして、手でおおざっぱにサッサッサと触って検査し、「これは4、5回やればお客様の願いはおそらく叶うでしょう」と言って、お試しを始めるんです。
そして、施術後の結果も同じように伝える。
すると、10人中5人は「4、5回で願いが叶うならやります!」となる。
そして、6回券の5回目終了時に、
「ふたを開けてみたら、顔の歪みがひどいことがわかった。これは骨格からの根本改善が必要です。骨は筋肉と違って硬いから、戻らない状態になるには15回くらいは必要ですね」
だいたいは、このステップにいきます。
そして、そのステップも終了したら、「やっと調子が乗ってきたところですから、2週に1回にして固めていきましょう」で、プラス12~13回。合計33回くらいが普通のパターンですかね。
当時、モデルさんなどが通う平均1回あたり8,500円の都心の美容整体では、その数字はいたって普通って感じでした。
あれ? そっちの方式では33回、私の提案は27回。
私の提示した見積もりの方が安いのに、最初にまとめて話す私には、全くお客がつかない。
今も昔も変わりませんが、私の絶対の人生訓は「後悔をしない生き方をする」でした。
罪悪感=後悔です。その感情満載で生きていくのは嫌で仕方がない。だから、後ろめたいことは全て避けて生きたい、それが本音でした。
そして、施術回数は最初にわかってしまうのだから、それを話した上で、気に入ってもらった状態でお客様には通ってもらいたかった。
そのために、セールストークが必要だったのです。
そのセールストーク作りは、ちょうどよかった。
だってさ、正社員になってすぐにわかったことですが、なんでお客様が高額な美容整体を30回も40回も続けてくれたかというと、それは毎月お店主催でパーティーを開いて、そこにお客様を呼び、スタッフがホスト、ホステスみたいなことをして、雰囲気が盛り上がったところで回数券を割引価格で販売する。
そういう方法を使って、信頼関係の基礎を作り上げてから、今度はお店での会話をお悩み相談・解決の場にして、さらに関係を深める。
スタッフはお客様の好みの話題に合わせて、ずっと会話しっぱなし。
だから、現場でも回数券がバンバン売れたわけです。
はっきり言って、施術中は会話のせいで手が止まっていても、回数券は売れまくるわけです。
私はこの光景を見て、絶対にパーティーには参加しないと心に決めました。
だってさ、開業してからもこの方式でご新規さんに対応するの?
冗談でしょ!
しかし、現場ではご新規さんのイチゲンさんを施術するだけでは、歩合は稼げない。歩合の対象はあくまでも回数券だったので、絶対に回数券を売らなければ、まともな生活は送れない。
その頃は、妻には開業に向けて経理などを勉強してもらっていた時期で、掛け持ちでパートしてもらうのは酷であったし、何よりも交通事故で妻は後遺障害のような症状に悩まされていたため、無理をしてもらいたくない。
しかし、まともな生活費は必要であったから、稼がなければならない。どうしても回数券を売らなければ、まともな給与にはならない。
そのためには、少ない回数の回数券から売っていくのが王道。そのためには、最初は「少ない回数で願いが叶いますよ」と言わないと、お客様は買ってくれないわけですよ。
少ない回数で済みます!と嘘を言うのもイヤ、パーティーでホストのまねごとをするのは絶対にイヤ(現実、社長によるパーティーへの強制参加に逆らい続けて1回も参加したことがないため、新患対応禁止の罰を受けたくらい)。
その私のポリシー―最初の1回の施術が終わるまでに、お客様のお悩みが叶うまで何回の施術が必要かわかるので、それを最初に話して納得してもらった上でお客様になってもらうという、超きれいごとを通したいという私のわがまま――ありのままの自分を生きるという私の人生訓を守り抜くためにも、セールストークはとても役に立ったのです。
完成した美容整体向けセールストークのおかげで、正社員になってたった6か月で、最も売り上げていた社長の歩合と肩を並べたくらい。
もちろん、パーティーには一回も参加したことがない私が、です。


