人間という生き物は、習慣性の生物と言われています。 まず順応し、良い結果を積み重ねることでよい習慣を獲得する。とても単純です。
ですから身体の不調がずっと続いている方は、仕組みとしての”不調でいる習慣性”が身体の中で働いているから、 健康になることが妨げられているというわけです。
このように考えると回復における重要なポイントは、“身体内部が常にベストコンディションに調整される『習慣性』を身につけること”となってきます。
そうしたら、もうやることは決まったようなものです。
不調が解消された良い状態を続けること、 それを身体がこれが普通の状態だと認識(=順応)するまで施術を通して記憶させていくことです。
そこがうまくいけば、身体が自然と健康な状態へと向かう能力がうまく活かされ、 結果、再発を防げることにつながります。
骨格矯正は背骨と骨盤のゆがみを正しく整えて全身をベストなよくする技術ですが、10人に1人いるかいないかの確率で、 それだけでは良くならないタイプに出会います。
多くのケースは、顔を洗おうとすると腰と膝がつらくなるとか、首の付け根が重だるくなり、背中がはって吐き気を催すといった、2つ3つの不快感を持っていて、 頚椎・背骨・骨盤の中から根本のゆがみを1つか2つ見つけて整え、その後筋肉をほぐすと、自然と全身のコンディションが整っていきます。
モデルケースを挙げてみると、おおよそ施術時間は、根本のゆがみ処置と筋肉ほぐし、施術後の効果測定やアドバイスの時間を含めてだいたい40分程度。 ほぐしを好まない正統派カイロプラクティックなら実施術時間は15分程度におさまるでしょう。
しかし”根本的なゆがみを整えるだけでは良くならない”後者タイプ、例えば、
- 通勤電車の中でちょっとスマホを見るだけで(下を向く)首がひどく不快になる
- 椅子に座っていたら腰が外れそうな感じ、
- パソコンをしているとひどく目が疲れて目を閉じざるを得なくなる
- 歩くとフワフワしている感覚に襲われる
- 階段の上り下りで脚に力が入りづらく、ガクッとなりそうで不安
- 毎日夕方になると全身ドッと疲れて横になってしまう
といった頭~足まで全身的に何らかの不快感が広がり、自律神経が乱れまくっているといった、いくつもの不調が複雑に絡み合って何が何だかよくわからないが不快で仕方がないと訴えるお客様にどう対応すべきでしょうか?
大方のケースにおいては、不調が根本のゆがみからものすごく遠くなっているため、全身的に細かな総合的なケア必要とされます。
上半身と下半身それぞれに不調に直結するゆがみがあり、まずそこを処置した後に、 全身維持を崩している根本的なゆがみにアプローチしながら、自律神経のバランスを調整をする手順になります。
しかも、脚の重心を整えて土台を構築する基礎施術を加えないと健康維持的な効果が続かない事情から、下半身にけっこうな時間を費やす必要があります。
そして残り10分で全身ほぐしを施こすことになります。
本来なら手順としては、下半身の基礎施術→首こりと頭が締め付けられる感覚に対する2つの施術を施す→ 回復維持に必要な自律神経の調整→全身ほぐしをするという順序が大切です。
しかし修行時代の研修や勤務した繁盛店ではお客様1人への持ち時間は60分と限られていましたので、 慎重さが求められる頭や首の施術と自律神経調整は”はしょらざる得ない”ことになります。
なぜなら持ち時間の中には、施術に入る前にヒアリング5分、施術後には、着替え、支払い、次回予約の受付、駐車場での車の入れ替えで時間を要するためです。
しかも次のお客様のお着替えが予約開始時間の5分前には完了していなければならないため、 1時間に1人の予約時間とはいっても50分でお帰りいただくことになります。
こういった時間配分により次の予約者に迷惑がかからない流れになりますが、当のお客様の頭痛対策、首こり、自律神経を含めた全身調整は残されたままになります。
そのため打ち切った施術の続きは次回ということになりますが、あくまでも基礎施術は外せないので、全身的な改善へのアプローチはいつまでも先送りとなってしまい、 結局一つ症状を良くしてからでなければ次にとりかかれないことになっていきます。
そうなると
- 「いつまでも週に3日も4日も通うはめになる」か
- 「延長料金を払ってでも全部処置してもらい、1週間に1回を定期的なケアに受けていくか」のどちらかの選択になり、いづれにしても必要以上に回数、金額ががかかることになってしまいます。
あるいは、他のお客様の予約時間に迷惑かける存在として疎まれたり、やんわりとあしらわれたり、、、
修行時代、そういったお客様を担当する度に
(あと15分あれば、、、)
全身への処置が完了して順応性が十分発揮できる身体にできるのに
(そうすれば治るのに、、)
全身施療コースとうたっているのに、、、
(全身ほぐしとコース名を変えるべきでは?)
効果実感を感じていただけない主な理由が施術者の未熟さにあるのはとても残念なことですが、実力が十分あるのに、時間の都合で施術が中断されるのは問題であると感じていました。
何よりも気の毒なのはお客様です。私たちを頼りにしてくださり、どんな努力も惜しまないと懸命なのに報われないのは、、、
お店側がこれではお客様が希望を持てないのも当然。クレーマーのように歪んで当然では?
難しい不調にこそ骨格矯正のようなすばらしい技術がふさわしいはずなのに。それが商売の都合で十分に発揮されないとは!
もちろん施術は速くてうまいがいいに決まっています。
私もそれは大賛成です。
しかし稀に簡単にはいかない症状を持つお客様がいらっしゃった場合に、“はじめから時間ありき”で対応するのは問題だと思ったわけです。
お客様の症状タイプいかんに関わらず、効率優先に偏りすぎる商売のあり方に加担するのは心苦しいことでした。
とはいっても、難しい症状は時間をかければ治るかといえば、そういうものでもありません。
大事なポイントは、お客様の回復に対して計画を持ち計算しながら施術していくことと、日によって変わる体調の微調整を含め、 必要な施術を1つも欠かすことなく行うこと、この2点につきます。
ではその2点を最優先に経営を考えようとすると、予測の段階で”事業継続は困難”という結論に達します。
独立初期はものすごく難しい不調への対応を必要とするお客様は少ないでしょうが、成果を出しているうちに、きっと口コミが広がって難しい不調をお持ちのお客様ばかりの来店が主流になってしまうかもしれません。
急にそのような好ましい状況になる可能性はないとは思いますが、何年かかるにせよ、もし、そうなった時のことを考えると、、、、。
受付から会計、お着替え、駐車場での車の入れ替え時間、施術毎の施術経過を細かくチェックする時間を余分にとったとして、 (コースにもよりますが)1人あたり最低で1時間半、最大で2時間半。
間をとって平均を2時間としますと1日に受付できる人数はたったの5人です。これに休憩を含めたら、それだけでもう12時間営業になります!
(相場の値段で)1日8人取って採算ギリギリと言われる(施術者1人での)個人経営で、1日最大5人しか取れないとなれば言わずもがなです。 解決策はやはり、1人あたりの時間を削るか、余分時間も料金に上乗せするかなのだろうか、、、
開業相談で出身校OBには「吉祥寺の一等地で、まともにやりすぎたら儲けどころか赤字だぞ」と呆れられましたが、 いざ開業準備をして計算してみると、行き着くところはやはりそこかぁというあっけない結論。
ただ普通なら、学校の講師やセミナー開催などの副収入を得ながら自分のこだわりを徐々に実現していくものですが、 ②に理由を記している通り、私の場合、本業一本でやっていこうと学生時代から決めていたので、副業という選択肢は毛頭ありませんでした。
正直、「まいったなあ、、、」です。
理想ばかりを追いすぎて現実の壁にぶつかってしまいました。
しかし、私は学生時代と修行時代の経験から見出した、“身体の不調や悩みを解決したいと訪れる方々に寄り添い、最大限の成果を提供するにあたって、必要な施術を実直に提供していくこと”に価値があると思っていました。
そして、そういったサービスが、必ずお客様のお役に立つ(真っ当な仕事をし続ければ、お金は後から勝手についてくる!)と信じて疑わなかったため、実現したいと願ってきた施術のあり方を最優先にするため、立地や経営環境を見直すことにしたのです。
それは同時に、適正な施術料金設定に近づけられるよう、それまでにあたためてきた開業計画をほぼイチから練り直し、 何を削っていくのか、手放していくのかをあぶり出していくことでした。
この再考中には、簡単に開業計画を変えるのはいかがなものか?夢を諦めるのか?という自己の葛藤や、 お客様のことを考えるのは当然にしても、まずは事業者としての収益や継続、ひいては自分の生活を第一にすべきでは?と同僚に指摘されたこともありました。
(私)そうはいっても、はじめから夢をかなえるために学校に行き、修行をした人ならそう簡単に計画を変えようとは思わないでしょう。 しかし自分は、専門学校に入れば手に職がつき、それで食べていける、、くらいの考えで治療業界入りを考えた人間ですよ
ところが、学生生活と修行を通してお客様と向き合っているうちに、「職のために」とだけでは割り切れない”思い”が芽生えてきて。 そして試行錯誤を繰り返しているうちに、何だかこの仕事があっているかも、ならばもっと活かしていきたいなぁ、と考えるうちにビジョンが開けていた。
やりがいをもって仕事をしている人には2通りの道筋があるように思えます。
一つは、ずっと願ってきたことが叶った、打ち込んできたことが実って現在があるという能動的な過程。
そしてもう一つは、はじめは意図していなかったにもかかわらず、後々自分に与えられたものだと気づき、 それを受け入れ無我夢中で突き進んでいるうちに、やりがいや楽しさ、喜びを見出して現在があるという受動的な過程。
私は圧倒的に後者なのです。
だから、はじめに計画した開業が行き詰まっても、大切にしている方向性を見失わなければ良いではないかという発想に至り、 躊躇を突き破って歩みだしました。
結果、物件交渉などけっこう難航しましたが、開業地を都心から遠く離れた郊外に変更し、 施術業を続ける間は食べてさえいければよいと決断。
店舗は自宅兼とし、自家用車を持たないなど縮小した生活に徹底する、 広告宣伝にお金をかけない経営体制をとることにしたのです。
『スタッフ紹介』にも記述していますが、 思い返せば、住む場所について妻から新しい要望もあり、考え直すによいタイミングもかさなっていました。
手作り&手書きの小さな木製看板を掲げるくらいで、外観は個人宅と変わりないマンションの一室。
(とはいえ、賃貸物件としては駅から離れている割に、けっこう家賃の高い高級マンションではありましたが、) お客様には治療にお越しいただくというより、肩肘はらず、知り合いの家にきたようなホッとできる空間を提供したいという思いで、 内装も自分たちでアレンジしていきました。
そして相場に近い料金設定が可能となり、2005年5月にプレイズは開業を果たしました。
その後も、売上も大事ならば営業日を増やせばいいんじゃないの?日曜や祝日を営業すれば問題は簡単に解決するのでは?
そういったご指摘をいただくことがありました。
土日休業から変更したものの、日曜・祝日と月曜を休業日としているのは、 著名な大学教授が開催する本格的な医療系研究会、学会のほとんどが日曜祝日開催だからが主な理由です。
健康維持に関する、より実践的で有益な情報の提供や適切な指導もお客様へのサービスの一環としていますので、 筋骨格に限らず、病気予防、栄養学などさまざまな分野の勉強もしなければならないと思っております。
大阪で開催される数々の研究会に参加したり、関連する異業種の勉強会に参加するなど、 事業やお客様に役に立つ勉強への投資は惜しまない性分なので、施術業がほとんど私のライフワークとなってます。
そのため月によっては毎週休業日が忙しいこともしばしばあります。
休業2日のうち、日曜日は上記のような「仕事のための仕事をする日」、 月曜日は「お客様に最善の技術を提供するための休息日」としたいところですが、 なかなか理想どおりには、、、貧乏ヒマ無しは、開業当初も現在も変わらずです。
それでもこの施術業を続けさせていただけいているのですから、とてもありがたいことです。
他にもいろいろなこだわりがありますが、 その一つ一つは、現在に至るまで開業時のスタンスと全く変わりません。
それは、「なんとかして、快適な動きのできる身体を手に入れたい!」そんな願いと、ご自身の「お身体への気遣い」をお持ちの来院者様のために最善を尽くすパートナーとして、お店が常に在り続けたいと思っているからです。
これからも、変わらずこのスタンスでいきたいと思っております。
長い話にお付き合いくださりありがとうございました。
2017年2月


